100万円運用するなら一括か積立か?投資信託かETFか?FPが回答
目次
今回の「FPに聞きたいお金のこと」は、100万円の資産の運用方法について、一括投資と積立投資のどっちがいいか悩む、50代女性からの相談です。
100万円の運用方法や種類に迷う50代女性Fさんの相談内容
生活防衛費以外に100万ほど預金があります。ただ置いておくのももったいないので、何か資産運用を始めたいと思っています。調べると「NISAで積立しよう」のような積み立てをすすめる記事がよく出てきますが、少しずつ積み立てて運用するのと、一括で運用するのではどちらが効率的でしょうか?運用商品の種類は投資信託かETFかで迷っています。分配金のあるETFもいいなあと思いますが、どちらがおすすめでしょうか。
100万円の運用について
2024年にNISAが新しくなり利便性も高まったことで、幅広い世代がNISA口座を開設し投資を始めるきっかけになっています。投資にはリスクがつきもので、「損をするともったいない」と感じる人もいますが、Fさんのように「預金に預けたままではもったいない」という発想を持つことも大切です。
100万円の運用についてですが、大きく2つ疑問を解決していきたいと思います。1つ目は一括で購入か積立で購入か。もう1つは投資信託かETFか。それぞれ整理していきます。
一括でまとめて購入VS積立でコツコツ購入
資産運用の大原則の1つが「長期投資」です。長期で運用することで投資信託が有する本来の収益率を得やすくなります。
例えばスポーツで考えてみてください。1試合だけの場合、運よく弱いチームが強いチームに勝つこともありそうです。ただし、50試合、100試合といったリーグ戦になるとやはりレベルの高いチームが上位となり優勝します。投資も同様で長期で行うからこそ、本来のリターン(実力)に近づくのです。
また、当初受け取った利息や配当をさらに原資として増やすことができる「複利効果」も長期でやる方が効果的です。そのような観点から見ると、今ある一時金をコツコツ少しずつ投資するより、一気に投資した方が長期投資の効果を得やすいと言えるでしょう。
一方、積立は少しずつお金を投じることになるため、先に紹介した長期投資の効果はやや弱くなります。ただし毎月少額ずつ投資をすることで、時間が分散される点はメリットになります。一時金をまとめて一度に投じ、その時点がかなり高値水準だった場合、その後じりじりと下がり続けて、長期間運用し続けても成果が冴えない、というシナリオも考えられるためです。
一括と積立、ハイブリッドタイプでの運用も
Fさんは特に初心者でもあるため、一度に全額を投資した場合、短期的に大きく下落すると不安を感じ、投資をやめたいと思うかもしれません。これは初めて投資をする場合、よくあることです。しかし、せっかく長期でやろうと考えて始めたのに、道半ばで止めるのはもったいないですよね。
よって、例えば100万円のうち50~60万円を成長投資枠の中から長期投資に適したファンド等を選び一括で投資し、残りの金額を使って月3~4万円程度、つみたて投資枠での積立を行うのも良さそうです。
つみたて投資枠で購入できるファンドを成長投資枠で買うこともできます。つまり、「ハイブリットタイプ」のメリットは、一括で購入分と積立分を同じファンドにすることもできるため、その後しばらく下落基調が続き、一括で投資した分(成長投資枠)が含み損の状況となっても、積立分は下がった分、多くの口数を購入できる点です。
投資信託かETFか?
ETFは上場投資信託のことで、厳密にはETFも投資信託の仲間となります。通常の投資信託をここでは「公募投資信託」としますが、公募投資信託とETFの大きな違いは取引所に上場しているかどうかです。
公募投資信託は上場していません。金融機関の店頭やネット上で商品を選んで購入するイメージです。一方ETFは上場しているため、株式のように証券取引所の取引時間中はリアルタイムで価格が動いており、その時の値段を見ながら発注を出すことになります。
また「分配金のあるETF」とありますが、分配金は公募投資信託もETFも基本的には同じ仕組みです。よって「ETFだから分配金がある」というわけではなく、公募投資信託も積極的に分配金を支払うものがたくさんあります。
コスト面や手数料など、公募投資信託とETFではそれぞれ違いがありますが、現在の預金に置いている状況から脱して長期で運用するという観点から考えると、どちらもそれほど大きな差はありません。つまり特にETFにこだわる必要はないと思います。むしろ、どのような投資をしたいか?という点に重きを置いてください。
例えば、「これから成長著しいアジアに投資をしたい」ということであればアジア株ファンドを選ぶ。「アメリカの株価指数であるS&P500に興味がある」ということであれば、S&P500に連動するETFを候補の1つにする。こういった具合です。
なお「つみたて投資枠」の対象となる商品は、金融庁が定めた一定の条件を満たす「投資信託」と「ETF」ですが、「ETF(上場株式投資信託)」は8本のみ(2024年8月23日時点)で、それ以外は公募投資信託です。よってつみたて投資枠で積立を行う場合、ETFにこだわらない方が選択肢は広がりそうです。もしくは「成長投資枠」で積立を行うというのも1つです。つみたて投資枠と併用できる成長投資枠で積立投資を行うことができます。成長投資枠であれば多くのETFが対象となっています。
まずは実践を
しばらく使う予定のない100万円を投資に回すという発想はとても良いと思います。ただ、思いついたものの、なかなか行動に移せないという人も少なくありません。
今回の結論は、「一括投資と積立投資のハイブリッド。商品は特にETFにこだわることなく選択肢を広げる方が良い。」とお伝えしましたが、これも1つの考え方に過ぎません。同じ商品に100万円を一度にまとめて投資した場合と数回に分けた場合、当初は成果に大きな違いが生じると思います。しかし10年、15年後となれば、それほど大きな違いにはなりにくいでしょう。
いつ?いくら?何に?と選択肢は無数にあるため、迷っていると時間がどんどん過ぎていきます。長期投資は時間を味方につけるのです。行動しなければ味方になってもらえません。「いつまでに投資を始める」と期限を決めて決断し、ぜひ行動に移してくださいね。
※資産運用や投資に関する見解は、執筆者の個人的見解です。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。