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病気で会社を休職…傷病手当+有給で生活費を守る方法とは?

FPにききたいお金のこと 中村 賢司

病気で会社を休職…傷病手当+有給で生活費を守る方法とは?

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突然の病気やケガで仕事を休まなければならなくなった時、真っ先に心配になるのは「生活費はどうなるのか?」ということでしょう。特に数週間~数カ月の休職となれば、給与が減ってしまう可能性もあります。今回は、正社員として働く方が長期間仕事を休むことになった場合の「傷病手当金」と「有給休暇」の関係についてのご相談です。受け取れる金額、手続き方法などを、ファイナンシャルプランナー(FP)の立場から分かりやすく解説していきます。

30代女性Nさんからの相談

病気で仕事を数週間休むことになりました。正社員として働いていますが、会社の傷病手当と有給は併用できるのでしょうか?もし一緒に使える場合、何日分の手当をもらえるのでしょうか?また、どのような手続きが必要ですか?

傷病手当金の仕組みと受給条件 

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まずは「傷病手当金」とはどんな制度なのか、基本的な事から確認しておきましょう。

傷病手当金とは、会社の健康保険(協会けんぽや組合健保)に加入している方が利用できる「公的な保障制度」です。業務外の病気やケガで働けなくなった場合、収入の一部を補うために支給されるもので、以下の4つの条件を全て満たす必要があります。

傷病手当金は、療養のため労務不能となった日(申請開始日)から起算して4日目より支給される制度です。最初の3日間は傷病手当金の支給はありません。 この3日間を「待期期間」と言います。なお、この待期期間は、3日間連続して休むことで成立します。

待期期間の考え方ですが、例えば月曜から水曜までの3日間を休み、その後木曜以降も休みが続く場合、木曜からが傷病手当金の支給対象となります。

有給と傷病手当、同時に使える?

次に、相談者Nさんからの質問にもある「傷病手当金と有給休暇は一緒に使えるのか?」という点について解説します。

結論から言うと、原則として併用はできません。
その理由は、傷病手当金の支給条件の一つに「給与の支払いがないこと」が含まれているためです。有給休暇を使っている間は、会社から通常通りの給与が支払われるため、傷病手当金の対象とはなりません。

よって相談者の事例では、まずは「有給休暇」を使い通常の給与を受け取る、その後有給休暇がなくなり欠勤したことにより無給になってから「傷病手当金」を申請するという流れが良いでしょう。

ただし、傷病手当金の待期期間(初めの3日間)は、有給休暇を利用することができます。また、会社によっては「傷病手当を優先して利用し、有給休暇を温存する」という運用を認めているケースもあるため、勤務先の人事・労務担当に相談してください。

以上の通り、有給休暇と傷病手当金の申請は、時期を分けて使うことが前提となります。

いくらもらえる?傷病手当金の日数と金額の目安

「どのくらいの金額がもらえるのか?」という点は、今後の生活設計を考える上でとても重要です。傷病手当金は給与の全額ではなく、概ね「3分の2程度」が支給されます。具体的には以下の計算式となります。

また、傷病手当金の支給日数には、最長で「1年6カ月」という上限がありますのでご注意ください。

この1年6カ月という期間ですが、一度職場復帰し、再び症状が悪化して休みに入った場合も、前に休んだ期間に続けて日数をカウントされますが、たとえ回復が長引いたとしても、1年6カ月にわたって手当が受けられるのは、心強い制度と言えるでしょう。

傷病手当金受給の手続き方法と注意点 

注意点
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傷病手当金を受給するには、所定の手続きを適切に行う必要があります。ポイントは「医師の診断」と「会社からの証明」が必要であることです。手続きの流れは以下の手順を参考にしてください。

また、回復に時間がかかり傷病手当金の支給を継続して受ける場合は、以下の点にもご注意ください。

なお傷病手当金は、退職後でも一定条件を満たせば受給継続が可能です。
具体的には、被保険者期間(任意継続被保険者期間を除く)が継続して1年以上あること、退職日の前日までに連続して3日以上仕事を休んでいたこと、退職日当日も仕事に就けず休んでいること。この全てを満たす場合は、同じ傷病での療養に限り、退職後も引き続き傷病手当金を申請することができます。 

まとめ

病気やケガによる休職は、誰にでも起こり得ることです。そんな時に「傷病手当金」という制度があることで、経済的な不安を少しでも和らげることができるでしょう。

ポイントは、有給休暇との併用はできないこと、そして手続きを正しく行うことです。事前に制度を理解し、必要な準備をしておけば、いざという時も安心して休養に専念できるはずです。今のうちから、職場の制度や健康保険組合のルールを確認しておくことをおすすめします。