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離婚後半数が養育費なし、もらうべき相場は?年収別・子供の数別解説

そなえる 内山 貴博

離婚後半数が養育費なし、もらうべき相場は?年収別・子供の数別解説

【画像出典元】「iStock.com/pick-uppath」

目次

今回のテーマは離婚後の養育費です。昨今は離婚という選択は決してネガティブではなく、新しい人生を歩むためにポジティブな選択ができたという人も増えています。

とはいえ、離婚後の子育ては経済的に大きな負担となり、特にシングルマザーの貧困率は5割を超えているという調査結果もあります(厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査結果報」平成28年)。

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貧困世帯は十分な教育を受けさせることができず、その子供もまた貧困に苦しみ、「教育格差」が社会問題として深刻化しています。離婚後も子供にしっかりとした教育を受けさせ、立派な社会人として育て上げていくために養育費についての知識を得ておくことはとても大切です。養育費の基本から現状、そして、年収や子供の数別の養育費の相場などを1つ1つ紹介していきます。

1.  養育費とはどういうものか?

そもそも養育費とはどういう位置づけでしょうか。
「離婚後、妻が子供の親権者に」という話はよく聞きます。この場合、母親と子供が一緒に生活し、父親は別生活を送ることになります。ではこの場合、父親は子供に対して何もしないということになるのでしょうか?

子供からすれば、両親が離婚してもどちらも親であることに変わりはありません。そして親には子供を扶養する義務があり、成人するまで親としての責任を果たさなければなりません。よって、親権者を持たない側(上の場合、父親)は養育費というかたちで、その責任を果たすわけです。

つまり、子供が成長する上で必要な費用を負担するのが養育費の考え方です。もちろん、親権者のある側(上の場合、母親)も養育費を負担することになりますので、それぞれの収入状況などさまざまな要因が養育費を決める上で絡んできます。

以下、夫婦が離婚し、妻が親権者となり子供と生活、夫は別生活で養育費を支払うことを前提に解説をしていきます。この場合、妻が養育費をもらう権利があるため、「権利者」といい、夫は養育費を支払う必要があるため「義務者」ということもあります。

2.  養育費に含まれるものは

養育費は子供が成長する上で必要なお金であるため、以下のようなものが中心となります。

・子供の食費など生活費全般。衣類や住居費なども対象に
・子供が社会人になるための教育費。授業料や塾、部活動の費用など
・子供の医療費など

養育費は夫から妻へ一括または分割で支払われることになります。そして、養育費の性質からすれば「子供のため」ということが大前提となるため、親権者である妻の生活費などは含まれません。

3.  年収別・子供の人数別の養育費の相場

養育費
【画像出典元】「iStock.com/zimmytws」

養育費の金額は親の生活水準がベースとなります。仮に離婚していなかったと想定してみてください。それほど収入が多くない世帯が頻繁に海外旅行に行き、塾を掛け持ちし、家庭教師をつけるというのは現実的ではないですよね。もちろん、その逆で収入が多い場合は、それなりの生活レベル・教育レベルが想定されます。よって、養育費も離婚したとはいえ、双方の親の収入がベースとなります。

原則夫婦の話し合いで決めることができるため、「必ずこの金額を払わなければならない」というルールや金額の相場があるわけではありません。

3-1. 養育費は「話し合い」で決めるの?

筆者自身も離婚後の養育費を確定するための資料作りを担ったことがあります。クライアントと弁護士さんの間に立ち、収支をシミュレーションし、それらを交渉の材料としてもらいましたが、そう一筋縄にいくものではありません。

話し合い(協議)で決まらない場合は、調停や審判、最終的には裁判という流れになります。そのため、裁判所が養育費の相場に関して、どのような見解を示しているかということが重要になります。

3-2. 裁判所が示す養育費の相場とは?

裁判所は「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究」をテーマに司法研究を行い、その結果を公表しています。同時に、養育費の目安となる「標準算定表」を開示しています。
(参照http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

上記をもとに、母(権利者)の年収と父(義務者)の年収と子供の人数(年齢)別の養育費の目安を簡潔にまとめました。なお、子供は0歳~14歳とします。(数値等は概算)

<養育費の目安(月額)>
・子供が1人の場合
縦軸が父(義務者)の収入/横軸が母(権利者)の年収(それぞれ会社員)

 

100万円未満

約200万円

約400万円

約600万円

100万円未満

0万~1万

約200万円

2~4万

1万~2万

約400万円

4~6万

2万~4万

約600万円

6~8万

4~6万

2万~4万

 

・子供が2人の場合
縦軸が父(義務者)の収入/横軸が母(権利者)の年収(それぞれ会社員)

 

100万円未満

約200万円

約400万円

約600万円

100万円未満

1万~2万

0~1万

約200万円

2~4万円

約400万円

6~8万

4万~6万

約600万円

10万~12万

8~10万

6万~8万

 

上の表のように、父親そして母親それぞれの経済力によって養育費が決まります。父親の収入が少ない場合、払いたくても払えないため0~2万円程度となります。父親の収入が増えれば養育費も増えますが、逆に母親の収入が増えるにつれて、養育費は減額となります。両親2人で子供の養育費を担うこととなるため、「母親にある程度収入がある」という状況を鑑み、父親が払う養育費が減額されることになります。

前出の厚生労働省の調査によると母子世帯で子供が1人の場合の養育費平均は3万5438円、子供が2人の場合は5万0331円となっていますので、上記表と大きく乖離していないようです。

このような仕組みを踏まえ、母親側としては「父親がしっかり働き、自分の年収が少ない時に養育費が高額になる」ということが容易に分かります。父親側から見ると、「お前(元妻)も働けるのだから、しっかり稼いで子供の養育費に協力しろよ」という主張をしたくなります。

こうなると話し合いで養育費を決める、または金額を見直すことは難しくなり、場合によっては裁判などに展開することも想定されます。離婚に詳しい弁護士によりますと、この場合、母親の年齢や学歴などから「どれだけ働くことが可能か?」ということなどを考慮するということです。

つまり、一定の学力があり、年齢も若いとなれば働く機会も多いとみなされ、収入がない、または少ない状況は、母親があえて働いていないのでは?とみなすこともあるようです。怠惰で働きたくないということを指摘され、養育費が減らされるかもしれません。つまり損得ではなく、それぞれが親として子供のために働けるのであれば働くという考え方をしっかり持ち、それを前提に養育費を決める必要があるのです。

なお、自営業の場合は給与所得者に比べると収入という概念がやや難しい場合があります。相手に分からないように収入を調整する、または隠すというケースもあるため、どちらかが自営業者の場合は弁護士など専門家に相談した方がよさそうです。

4.  養育費の現状は?

裁判
【画像出典元】「iStock.com/AndreyPopov」

前出の厚生労働省の調査によると母子家庭のうち約56%が「養育費を受取ったことがない」と回答しています。その理由を探ると、そもそも「養育費の取り決めをしていない」という比率が同程度の約55%に及びます。つまり、細かい取り決めをしていないために養育費自体、元夫から受け取っていないという状況が浮かび上がってきます。

その理由として圧倒的に多いのが「相手に支払う意思がないと思った」や「相手に支払う能力がないと思った」というもので、最初から相手に期待していなかったために取り決めも行わず、養育費を受け取っていない人が多いようです。

ちなみに父親が親権を握った場合は7割以上が養育費を受け取っていません。同様の理由が該当しているのですが、父子家庭の場合は「経済的に問題ない」という回答が一定割合を占めています。

このような調査結果から「シングルマザー」が厳しい状況にあることは容易に想像できます。なんとか、離婚前に養育費の取り決めをするということを強く意識しましょう。なお、その場合父親は養育費を払う義務があるため、離婚後に「取り決めをしていなかったけど、やっぱり養育費を払って」という主張をすることは可能です。

ただし、この場合、離れて住んでいる元夫と弁護士などを通してやりとりをすることとなり、時間や費用がかかります。さらに、養育費はさかのぼって主張することはできません。養育費を少しでももらいたいという場合は一度、弁護士等に相談してみてください。

5.  その他に養育費をもらえないケース、または減額されるケースはあるか

調査結果から、養育費をもらっていないケースが多いという現状が分かりましたが、養育費をもらっていたけれど、途中からもらえなくなるといったケースはあるのでしょうか?

まずは、義務者(夫)が生活的に困窮した場合はもらえなくなることが想定されます。本人に養育費を払う意思があっても、失業や病気などで収入が減少した場合は支払うことが困難になります。

また、権利者(妻)が再婚し、子供が再婚相手と養子縁組をした場合も、原則、養育費はもらえなくなります。新しい夫が父親として扶養義務が生じるためです。

6.  養育費はいつまでもらえるのか

養育費をいつまでもらうことができるのか?という期限も原則、親として「成人するまで」払うことになりますが、「成人する」というのはいつまでを指すのでしょうか?

現在、選挙権は18歳からで、今後、民法改正で18歳成人、でもお酒やタバコは20歳からと、今以上に「成人」という概念が難しくなっていきます。「いつ成人するか?」ということも、話し合いで決めることになります。

生活レベル、教育への価値観などそれぞれの事情を鑑み、高校卒業を成人として夫と妻が取り決めを行うこともありますし、大学卒業とすることも考えられます。

支払う夫からすれば短い方が良く、受取る妻からすればできるだけ長くもらいたいでしょう。よって、話し合いでまとまらない可能性があります。そこで、裁判所などにおいては「養育費は20歳まで」という考え方が一般的のようです。

なお、養育費の金額を決める上でも学歴が1つの要因となりましたが、「子供が成人するまで」という目安も親の学歴が影響することもあるようです。夫婦それぞれが大学卒でありながら、「子供の教育は高校まで。18歳までしか養育費は払わない。」と主張するのはやや無理があるようです。

7.  離婚する前にしっかりと取り決めをすることが重要

両親それぞれの収入はじめ、さまざまな要因が養育費の額や期間を決める上で影響します。なかには月額の手取りが30万円の元夫に対して「27万円の養育費が欲しい」といった主張をするケースもあるようです。このような明らかに無理な主張は通りませんが、ただ、全く主張しないのも問題です。

上記で紹介しましたように、何の取り決めもせず、その結果、1円も養育費をもらっていないという人も多く存在します。離婚が子供の成長に与える影響を最小限にとどめるためにも、離婚前にきちんと取り決めを行うことは覚えておいてください。

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養育費に関するQ &A

Q 養育費をもらっていますが、やはり離婚後の生活が厳しいです。どのように家計を見直すべきでしょうか?

A 離婚後は経済面のみならず子供の面倒などを実家に頼っている人も多いようです。実家に相談する方法の他、各自治体が一人親に対してさまざまな支援をしているケースもあります。一度役場で相談してみるのも1つです。

Q 貯蓄を取り崩して現在借金をしています。借金返済と学費準備とどちらを優先すべきか分かりません。

A フリーローンなど高い金利でお金を借りている場合、早めに返済することを優先してください。どうしても厳しい場合、学費については奨学金制度などを活用する方法もあります。やや不本意ではありますが、子供のために加入している学資保険を解約し返済に充てるのも1つだと思います。
 

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