ダブルワークの確定申告、会社にバレないための方法・ポイントとは?
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ダブルワークとは2カ所で勤務することや1か所に勤務して給与をもらいながら、もう1カ所でフリーランスとして働くことをいいます。コロナの影響もあり、今は働き方が大きく変わった人も多いと思います。副業を認める会社も増えてきました。またさまざまな業界で人手不足が大きな問題となっており、一人二役こなすことになる「ダブルワーク」は、今後働き方のスタンダードとなるかもしれません。ただ、会社に内緒でダブルワークをしている人は、確定申告をすると会社にバレるのでは?という心配もあるでしょう。今回はその「ダブルワーク」をしている人の税金関係についてまとめてみたいと思います。
ダブルワーク、どんな種類がある?
ダブルワークといっても明確な定義があるわけではありませんので、以下のように3つに分けて説明します。
- ① 主たる勤務先があり、別にもう1カ所勤務先がある
- ② 主たる勤務先があり、それとは別に自身で事業をしている
- ③ フリーランスとして主に働いているが、週2回ほど会社勤務(パートやアルバイト)をしている
上記の3つ以外にも、お昼はスポーツインストラクター、夜は飲食店など、個人事業主として異なる2つの仕事をしている場合もダブルワークと呼べそうです。ただし、どちらの仕事も個人事業主として行っている場合、基本的に毎年確定申告が必要となります。つまりダブルワークではない事業主と手続き上はほとんど変わりません。よって今回このケースは割愛します。
上記3つの共通点は、雇用形態や出勤日数はそれぞれですが、会社勤務が伴うということです。会社が源泉徴収や年末調整などある程度手続きをしてくれるからこそ、「自分の場合は確定申告が必要なのか?」と迷ってしまう可能性があります。そこでまず、会社員で確定申告が必要なケースはどのような場合があるのか、整理したいと思います。
会社員で確定申告が必要な人はどんな人か
基本的に事業主の場合は確定申告が必要となりますが、会社員の場合は会社内での手続きで完結することが多いです。ただし、以下に該当する場合は確定申告が必要となります。
- A)給与等の収入が2000万円を超えている人
- B)給与や退職所得以外の所得が20万円を超える人
- C)2カ所以上から給与の支払いを受けている人
それではダブルワークの種類ごとにどの場合に該当していくか見ていきましょう。
① 主たる勤務先があり、別にもう1カ所勤務先がある
勤務先が2カ所ある人はCに該当するため確定申告が必要です。
②主たる勤務先があり、それとは別に自身で事業をしている
例えば会社勤務をしながら自宅で動画を作成し、有名チャンネルとなり、それなりの収入がある。といったケースを想定します。この場合はBに該当しますので、動画運営の所得が20万円を超えていれば確定申告が必要となります。ただし、言い換えれば20万円を超えていなければ所得税の申告は必要ありません。
ここでいう「20万円の所得」というのは、売り上げから必要経費を引いた儲けベースです。よって、ダブルワークとして個人で何らかの事業を始める場合は、必要経費に該当するものの領収書をしっかり保管するといった意識を持つようにしましょう。
在宅ワークの場合は部屋で何時間もパソコンに向き合い仕事をしているため、光熱費なども必要経費として認められそうです。ただし、1カ月の電気代を生活用と事業用に分けるのは難しいため、例えば利用時間の割合などに応じて費用計上するという考え方もあります。このあたりは判断が難しいところもあるため、事前に税務署や税理士などに確認しておくと良さそうです。
なお、20万円以下で申告が不要なのは所得税のみで、住民税にはこのような定めはありません。20万円以下とはいえ少しでも所得が生じた場合、住民税の手続きを行う必要があります。「〇〇市、住民税」とインターネットで検索すると各自治体のサイトに丁寧な解説が掲載されており、必要書類のダウンロードもできます。
③フリーランスとして主に働いているが、週2回ほど会社勤務(パートやアルバイト)をしている
この場合はフリーランスが主ですので、毎年確定申告をすることが大前提となります。例えばフリーのライターとして年間通してさまざまなネット記事や雑誌の記事を執筆する傍ら、知人の会社から「人手不足だから事務仕事を手伝ってほしい」と頼まれ、週に2~3回、知人の会社にパートやアルバイトとして勤務するというケースが考えられそうです。
パートやアルバイトも基本的に源泉徴収や年末調整の対象となります。ただし、あくまで会社でもらった給与分が対象となりますので、この場合もフリーライターとして働いた事業収入分と会社で年末調整済の源泉徴収票を合わせて確定申告することになります。
年末調整はどっちの会社でしたらいいのか
年末調整は、毎月給与から徴収する税額を適正な額に調整する役割があります。生命保険料控除などを踏まえ、いわば税額を「再計算」するため、多くの方が既に源泉徴収され支払っている税金が還付されることになります。
ただ、この年末調整は原則「給与収入の多い勤務先1カ所」で行います。よって、複数の勤務先で働いて給与をもらっており、それぞれに年末調整の紙をもらった場合は、収入の多い方1カ所で年末調整を行ってください。残りの給与や収入については確定申告を行い、正しい税額で納付、または還付してもらう必要があります。
確定申告しないとどうなる?
これはダブルワークの人に限らず良く聞かれる質問です。例えば仮想通貨(暗号資産)やFX(外国為替証拠金取引)で大きな利益が出た人なども「申告しないといけませんか?」、「バレないのでは?」とつい考えてしまいます。
所得税に限らず、親から財産をもらった場合(贈与税)、親の死亡で財産を引き継いだ場合(相続税)なども一定の基礎控除以上の金額であれば申告の必要があります。
日本のこのような税金は「申告納税方式」という仕組みで、「国は国民一人一人の所得を全て把握するのは困難なため、該当するものがあれば必ず申告してください」というのがルールになっています。
会社員は源泉徴収や年末調整といった仕組みが「申告の代わり」となってくれています。確定申告は特別な存在のように感じるかもしれませんが、基本的には私たちが毎年確定申告することが税務上の原則なのです。これは法律であり、守らなければ法律違反ということになります。
税務調査はさまざまなかたちで行われているため、申告していないことが発覚し、悪質と判断された場合は追徴課税など上乗せで課税される場合や、金額が大きい事例であれば逮捕されるケースも多くあります。
「税務調査は自分のところにはこないだろう」と思っている人も多いかもしれませんが、税務調査は給与や報酬の支払先、金融機関でも行われています。例えば、「〇年〇月から3カ月間の取引を全て見せてください」といった調査が企業側で行われ、そのリストの支払先に名前があるのに、その所得を申告していないなど、間接的な調査で発覚する場合もあります。
「この金額は経費になるのかどうか?」と判断に迷うものや、「完全にその取引だけ申告するのを忘れていた」など誰しも間違えることや失念することはあるでしょう。そういった場合は申告時期が過ぎてからも修正申告という方法があります。
ダブルワークを始める時点で「会社頼みではなく、税金を始めお金のこと全て自分でマネジメントしなければならない」そういった意識を持つことが大切です。