減りそうなのは「児童手当」と「児童扶養手当」どっち?何歳まで支給される?
目次
2020年12月の閣議決定を受けて見直しされる「児童手当の特例給付」。賛否両論ありますが、その社会背景と見直しの予定内容をご紹介します。児童手当のおさらいや、その他の制度についてもまとめて確認していきましょう。
児童手当とは
児童手当とはどのようなものか、内容を確認していきましょう。
児童手当の目的と受給額
児童手当とは、子育て世代をサポートする制度で、子供が健やかに育つことや生活の安定を目的としています。少子化が進む中、安心して子育てができる社会づくりの一環というわけです。
給付を受けるのは、0歳から中学卒業までの子供を養育する親などで、支給額は子供の年齢などによって異なります。
生まれてから3歳未満は1万5000円/月、3歳以上小学校終了前までは、第1・2子が1万円/月、第3子は1万5000円/月、そして中学生は1万円/月と子供の年齢によって支給額が決まっています。しかし所得制限があり、扶養親族が2人なら年収917.8万円(所得制限限度額698万円)というように扶養する数によって上限が設けられています。もし限度額を超えている場合でも児童1人当たり5000円/月が支給されるという高所得者向けの特例給付があるため、児童手当が全くもらえない、ということはありません。
所得制限限度額(平成24年6月分の手当より)
「収入額の目安」は、給与収入のみで計算していますので、ご注意ください。
(注)
1.所得税法に規定する老人控除対象配偶者または老人扶養親族がいる方の限度額(所得額ベース)は、上記の額に当該老人控除対象配偶者または老人扶養親族1人につき6万円を加算した額。
2.扶養親族数の数が6人以上の場合の限度額(所得額ベース)は、5人を超えた1人につき38万円(扶養親族等が老人控除対象配偶者または老人扶養親族であるときは44万円)を加算した額。
※児童を養育している方の所得が上記の額以上の場合、法律の附則に基づく特例給付(児童1人当たり月額一律5,000円)を支給します。
内閣府HP「児童手当制度のご案内」
児童手当の手続きや支払い時期
給付は6月、10月、2月の年3回に分けて支払われます。例えば、2月~5月分は6月に振り込まれるというように後払いです。
手続きは、市区町村で出生届を出す際に児童手当の「認定請求書」を合わせて提出すると良いでしょう。もし引っ越しをすることがあれば、転入先で同様の手続きが必要です。認定されるとその翌月分から支給されます。このように原則、認定されてからの支給となりますので、忙しい時でも先延ばしにせず、早めに手続きをするようにしましょう。なお、公務員の場合は勤め先で申請できます。
注意点
注意が必要なのは、一度手続きをすれば中学生まで自動で支給されるというわけではないということです。毎年6月1日を基準に、児童の監督や保護、生計同一かなど児童手当を受けるための要件を満たしているか確認する「現況届」を提出する必要があります。
現況届は自治体から封書で届きます。必要事項を記入し、健康保険証のコピーなど確認に必要な書類を添付し返送しましょう。もしうっかり失念すると、その年6月以降の児童手当が受け取れなくなってしまいます。
児童手当はなぜ見直しの検討対象になったのか
見直しをされる内容と時期
児童手当の受給要件が今後厳しくなる予定です。
これまでも扶養人数ごとに一定の所得制限が設けられていましたが、所得制限を超えている場合でも、1児童に対し5000円/月が支給されるという特例給付があるため、全く受け取れない、ということはありませんでした。
しかし、児童手当の所得制限がより厳格になり、今後は年収1200万円以上(実際は所得制限限度額で判定されるため年収額は目安)の場合は手当がもらえなくなるようです。改正後の所得制限が適用されるのは、2022年10月からの見通しです。
ただ、年収1200万円以下ならこれまでのように制限を超えていても特例給付の5000円の受給は継続されます。仮に扶養親族が2人の場合は年収が917.8万(所得制限限度額698万円)となりますが、年収1200万円未満なので、これまで通り特例給付として5000円/月が受け取れるというわけです。
見直しの理由
2019年10月にスタートした幼児教育・保育の無償化をはじめ、さまざまな子育て支援策が実行されていますが、今後は、さらなる対策の実施(例えば、保育園の待機児童の解消に千数百億円が必要になるなど)のため、より必要性が高い課題解決に向けて資金を配分することが意識されています。今回もその一環として児童手当の受給要件に所得制限を設けることになったようです。
また、コロナ禍で財政状況が厳しくなる中、妊娠届数は2020年1月~10月で前年同期比5.1%減少するなど、不安定なご時世での産み控えも進んでいるよう。児童手当の所得制限の強化は賛否両論ですが、より必要な人に必要なサポートをするという社会的な役割を考えると仕方のないことかもしれません。
夫婦合算は見送りに
今回注目されていた検討事項として、「“夫婦合算”を所得判定の方法とすること」がありました。現在は夫婦のどちらか「所得が高い方」の所得で判断されています。それにより、例えば世帯年収が1000万円の夫婦でも、夫のみが1000万円稼ぐ専業主婦家庭では児童手当が減額されるのに対し、夫600万、妻400万で合計1000万円の家庭は、満額受けられるという現象が起こり、同じ世帯年収なのに不公平だとされていました。
しかし、今回その案は見送られることとなりましたので、児童手当が減額、または廃止される人はそういう意味で一定の範囲に抑えられることになります。
児童手当に似ているけれど違う制度「児童扶養手当」
児童手当と非常に似ているのが「児童扶養手当」という給付制度です。ただ、似ているのは名前だけで内容は異なります。今回の児童手当見直しの影響を受けるものではありません。児童扶養手当とはどのようなものか簡単に確認していきましょう。
児童扶養手当とは
・父母が離婚した児童
・父または母が死亡した(または生死不明の)児童
・父または母が一定の障害状態にある児童
・父または母が裁判所からのDV保護命令を受けた児童
・婚姻によらないで生まれた児童 など
に対する手当で、該当する児童を養育している人に支給されます。
前述の児童手当も合わせて受け取ることが可能です。
支給額は、所得や子の人数によって違い、全部支給や一部支給などがあります。
計算方法は複雑なため今回は福岡市の簡易な表を参照いただければと思います。
児童扶養手当の支給額(令和2年4月分から)
※定められた額以上の所得があるときは手当が支給されません。また、所得に応じて全部支給と一部支給があります。
所得の判定は、同居の扶養義務者がいる場合は合算する必要があります。例えば離婚して実家に戻り生活するというケースでは、両親の所得も合わせた所得判定となり、注意が必要です。
その他、児童が20歳未満で一定の障害状態にある場合は、「特別児童扶養手当」という給付もあります。