扶養内で働くのは本当に得?損しないための働き方と年収の目安は
目次
働き方改革のおかげで勤務する側にとっては以前より働きやすい環境になってきている印象があります。特に女性が産休や育休を取りやすくなり、職場復帰もしやすくなりました。とはいえ、結婚や出産という大きな節目に「扶養の範囲内」を意識して働く人も少なくありません。その際、「年収は103万と130万、どちらを基準にしたらいいの?」「106万の壁は何が違う?」といった疑問を抱く方も多いので、今回は「扶養内で働く」ことについて1つ1つ整理していきたいと思います。
※今回の記事では夫が会社員、妻が扶養内で働くことを前提にしています
正社員とパート(扶養内)では生涯年収の差はどのくらい?
30歳から65歳まで35年間、正社員として年収400万円で働いた場合と扶養の範囲内を意識して年収100万円で働いた場合では生涯年収はなんと1億500万円も差が生じます。もちろん正社員の場合は社会保険や税金の負担が生じるため手取りはいくらか少なくなりますが、それにしても「億」の単位での違い、大きいですよね。この差を意識すると「扶養の範囲内」を意識して仕事をセーブするのが本当に良いのか?と考えてしまいますよね。
扶養内で働くとは?社会保険と税務上の違い
そもそも扶養内で働くとはどういうことでしょうか?これは一般的に2つの意味があります。社会保険上の扶養と税制上の扶養です。1つ1つ紹介します。
社会保険上の扶養
夫が会社員であれば、妻は夫に扶養してもらうことで健康保険と国民年金の保険料を負担する必要がありません。保険料の負担が生じずに保険証をもらうことができ、国民年金(基礎年金)にも加入していることとなります。年金においては「第3号被保険者」といいます。
税務上の扶養の範囲
夫は1年間の所得に対して所得税や住民税を払いますが、こういった税金は、基本的に所得が多くなるほど負担が増していきます。ただし、妻が一定の所得以下である場合、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」という控除を受けることができ、その分夫の税負担が軽減されます。言い換えると、妻の所得が一定以上ある場合、夫は控除を受けることができません。つまり、この控除を受けられる範囲を意識することが扶養の範囲内で働くということを意味します。
よって、妻が一定の収入の範囲内で働けば「扶養の範囲」ということで前述の社会保険、そして税金のメリットを受けることができます。ただ、それぞれに扶養の範囲のルールが定めてあり、社会保険、税金、それぞれで違いがあり、一般的に「〇万円の壁」といった言われ方もしています。それぞれの壁について説明いたします。
103万・106万・130万・150万・201万の壁とは?
良く言われる壁は103万と130万円です。そして社会保険や税制の改正などもあり最近は106万円、150万円と201万円も意識されるようになりました。それぞれを金額順に整理すると以下のようになります。
最も有名な壁が「103万円の壁」です。103万円が意識される理由は夫が所得税・住民税上の配偶者控除を受けるためには妻の「合計所得金額が48万円以下」という条件があります。
ここでいう所得というのは収入とは違います。収入から必要経費を差引いたものを所得といい、パートやアルバイトも含め給与収入のみの人は以下の「給与所得控除」を差引いて計算することになります。
表から分かるように給与収入から少なくとも55万円を控除することができます。よってX-55≦48万円になればよいのです。このXが103万円になります。
また所得が48万円の場合、妻自身の所得税を計算する際の基礎控除が同額の48万円となります。つまり「夫が配偶者控除を適用することができ、妻自身も所得税がかからない」ちょうどいい金額となるため「103万円の壁」は従来より有名な数字なのです。
<103万円の壁・まとめ> 年収103万円-(給与所得控除55万円)=所得48万円 妻の所得:48万円⇒夫の配偶者控除適用可能
妻の所得税 所得48万円-基礎控除48万円=0円 所得税が課税されない (住民税は別の計算となります) |
では妻の収入が103万円(所得48万円)を超えた場合、夫は一切控除を受けられないのでしょうか?以下表2をご覧ください。
表から分かるように妻の収入が103万円を超えた場合、「配偶者控除」から「配偶者特別控除」へと名前が変わりますが、妻の収入が一定の額に達するまでは、夫に適用される控除額38万円は変わりません。「控除名が変わるものの控除額が変わらない」ラインが妻の年収150万円となるため、「150万円の壁」と言われています。その後、少しずつ配偶者特別控除は減っていき、妻の年収が201万円を超えると控除額がゼロとなります。これが「201万円の壁」です。
<103万円・150万円・201万円の壁・まとめ> ・103万円:配偶者控除を適用することができる上限 ・150万円:配偶者特別控除と控除名が変わるものの、配偶者控除と同額の38万円控除 を適用できる ・201万円:配偶者に対する控除がゼロになる |
なお、103万円、150万円、201万円は年間の収入を指します。よって、1月~12月の1年間でどれくらい働くか?ということがポイントとなります。
上記税金ででてきた壁以外の「106万円」と「130万円」は健康保険や厚生年金の被扶養者(扶養されるもの)の基準となります。この2つにおいては「130万円」がよく知られています。
妻がパートで働いても年収が130万円未満で、かつ夫の年収の2分の1未満であれば被扶養者となることができるため意識する人が多い壁です。ただし、妻が勤務しているパート先が従業員501名以上の会社の場合かつ、「月収8万8000円以上」等の条件を満たした場合、健康保険や厚生年金に加入しなさいというルールに変わりました(2016年10月より)。つまり扶養から外れなければならないのです。8万8000円を年収にすると約106万円であるため、それ以降「106万円の壁」として意識されはじめました。
なお、2022年には従業員数501名以上が101人以上に、2024年には51人以上と範囲が拡大します。それだけ該当する人が増えるため、今以上に「106万円の壁」を意識する人が増えると思われます。
また社会保険の場合は税金と異なり、1月から12月までの年間の収入で計算するのではなく、今現在の収入状況、そして今後の収入状況から判断することになります。さらには税金上は非課税とされる通勤費なども会社から支給されるものは原則収入としてカウントすることになります。
よって、税金の場合は「1年間通して103万円以下に抑えればよい」ため、年後半にかけて年収を調整することも可能ですが、社会保険はその時々の状況で判断されますので、年間の収入が130万円未満でも、「年収130万円を超えるペースで働いている」とみなされた場合、例えば夫の会社から「扶養から外れてください」といった指摘を受ける可能性もありますので注意してください。
130万円がライン?働き損しない年収は?
税金、社会保険、それぞれ年収の計算の仕方がやや異なりますが、細かい点は考慮せず単純に数字だけで判断すると130万円までは税金でも社会保険でも扶養の範囲内で働く効果が最大といえます。ご自身の所得税・住民税の負担は多少生じますが、健康保険上の扶養の範囲内で年金も第3号被保険者であり、夫は38万円の配偶者特別控除を適用することができます。
一方で、もし130万円を超えるような場合はどれくらいの年収がちょうどよいのか?働き損になるのではないか?と気にする人が多いようです。
年収140万円で社会保険料の負担が生じると、手取りは130万円を下回ることが見込まれますのでやはり「働き損」の状態といえるでしょう。よってその場合は150万円や201万円といった壁がありますが、それほど気にすることなくおもいきり働く方が良いというのが一般的な考え方です。ただ、どれくらいの水準で働くことがベストなのか?それぞれの家庭の状況があるため、難しいところです。そこで2つの働き方プランを紹介していますので参考にしてください。