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ジャパンリスク対策!? ~海外に銀行口座を作るのは本当にオトクか? その2

ふやす 内山 貴博

ジャパンリスク対策!? ~海外に銀行口座を作るのは本当にオトクか? その2

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海外銀行口座の2回目です。前回、口座開設のメリットやデメリットについて、私の経験も踏まえお伝えしましたが、今回はさらに細かく注意点などをお伝えします。

銀行からエアメールが! 急にルール変更

銀行イメージ
ultramarine5/iStock/Thinkstock

「オーストラリアの銀行からエアメールが届き、どのような内容が書いてあるのか教えてほしい」。FPはこうした相談を受けるケースもあります。英文で書かれた内容をよく読んでみると、ペイオフの預入額が大幅に変更されるといった内容でした。

ペイオフとは銀行が破たんした際の預金者保護の仕組みで、日本の場合は1000万円とその利息まで保護されるようになっています。オーストラリアにも同様の制度があり、私がレターの内容を読んだ時は、当時のレートで日本円換算約7000万円までは保護されていました。

日本より圧倒的に保護される金額が大きかったのですが、よく読んで見ると、その額が大幅に引き下げられると書かれていたのです。しかも、引下げ実施は数か月後に迫っていました。

相談に来られた方は「オーストラリアの銀行なら、数千万円程度預けていても大丈夫」と思い、保護される上限額に近い金額を預けていたようです。随分前に案内レターは届いたようですが、そもそもこういった案内を読んで対応するのは腰が重たいものです。それがましてや、英語で書かれているとなるとなおさらです。

この相談で内容を把握され、その方は、その後上限額を超える金額は別の銀行口座に振り分けられたようですが、知らずに預けたままで、もしその銀行が破たんしたら悔やんでも悔やみきれないところでした。

国によっては急にルールが変わる場合もありますし、そもそも、そういった情報に接しにくいという点もあります。このあたりは特に注意が必要ですね。

私自身も口座開設当初はエアメールや電子メールに注意深く目を通していましたが、しばらくすると表が英文、裏が中国語という案内文にどんどん距離を置くように・・・。

そんな私が指摘できるような立場ではありませんが(汗)、このような文章は少なくとも要点だけは確認しておきたいところです!

利息にかかる税金はどうなるの?

税務署
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国内の銀行預金には利息に対して源泉分離課税という制度があり、所得税、住民税、復興特別所得税として合わせて20.315%が課税されます。源泉分離課税の源泉とは源泉徴収を意味し、銀行が税金を徴収し、私たちに代わって納税してくれることを指します。

分離課税は、総合課税の反対で、給与所得や不動産所得(家賃収入がある方など)とは分離し、別枠で税額を計算することを意味します。

そのため、常に税率は同じですし、銀行が手続きをしてくれているので私たちは何もする必要はありません。読者の皆さんの中に、「毎年、銀行から受取った利息額を計算し、確定申告している」という人はいないと思います。それはこのような仕組みだからです。

<国内銀行の利子にかかる税金>
利息 × 20.315%(所得税15%) ※これで課税関係終了

では、海外の銀行から受け取った利息はどうなるでしょうか? この場合も利子所得として課税されますが、源泉分離課税ではなく、総合課税となります。これは給与や不動産などと合算し、原則、確定申告が必要となります(利子が少額の場合など、申告不要の場合もあります)。

<海外銀行から受け取る利子にかかる税金> 
給与・不動産・利子を合計 × 税率は所得額によって異なる(※所得税の最高税率の場合は45%) ※確定申告が必要

所得税は超過累進税率という制度がとられており、所得が多ければ多いほど、税率が上がる仕組みになっています。よって給与や不動産などの所得が多い方が海外銀行から利子所得を受取ると、その利息も合算して高い税率で納税することになります。

国内が超低金利のため、海外銀行口座に魅力を感じる人もいるかもしれませんが、その後の課税のことも考えながら慎重に検討してください。

相続税対策になる?

お金を保護
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海外銀行口座開設が相続税対策につながるという話もよく耳にしますが、その理由の一つに「ジョイント口座」があります。

ジョイントは共同を意味し、夫婦共有の口座を持つことができます。通常の口座ですと、夫が亡くなった場合、それを妻や相続人が引き継ぐことになり、その額が相続税計算の対象となりますが、ジョイント口座の場合は共同口座なので、引き続き妻が使えるため、相続税の対象にならないと考えている方がいるようです。

ところが、これは誤りです。

この場合も当然、単独口座同様、相続税の対象となります。さらには口座開設をした際に、夫の財産を夫婦共同にすると、その段階で夫から妻へ贈与が発生したとみなされる可能性もあります。ですから、基本的に相続税を減らすといった対策にはつながりません。

被相続人(亡くなった人)と相続人(財産を引き継ぐ人)が10年超海外で生活している場合、海外資産は日本の相続税の対象から外れますが、それ以外は海外にある資産も全て相続税の対象となりますので注意が必要です。

この制度も以前は「5年超」だったのですが、平成29年度の税制改正で「10年超」となりました。このことからも海外資産に対してよりいっそう、相続税の課税が厳しくなったといえます。

ジョイント口座は単独口座と比べ、夫が亡くなった際に口座が凍結しないというメリットがあります。通常、亡くなった人の銀行口座は凍結され、遺産分割協議書や各種戸籍関係の書類などが必要となり資金引き出しまでかなりの時間や手間を要する場合がありますので、そういう点ではジョイント口座は便利です。が、相続税の対象となることは知っておきましょう。


2回にわたり海外銀行口座について紹介しましたが、国内銀行とは勝手が違うことがいくつもあります。なにやら周りが「日本は危ない、海外にシフトした方が・・・」、そんな話をしていたということだけでは判断しないでくださいね。

今回のコラムを参考に、じっくり必要性を検討してください。

※税務につきましては一般的な見解です。詳細は税務署でご確認ください。

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